「低FODMAP食」は、いま現在、お腹に不調を感じている方のための新しい食事法です。
お腹の不調をおこす原因となっている食べ物を特定して制限することで、「腸」への負担を減らし、快適な毎日を取り戻そう!というのが低FODMAP食の考え方です。
「第二の脳」とも呼ばれる「腸」には、脳からの指令がなくても自己で判断して活動する力が備わっていて、「脳」とも相互に影響し合っているそうです。
なぜFODMAP?
現在、日本人の10人に1人、女性に限っては10人に2人以上が、何かしらのお腹の症状に悩んでいると言われます。
お腹の症状とは、一般的に知られる腹痛・便秘・下痢だけでなく、病院へ行くほどではないけれど、密かに悩んでいる症状も含みます。
- お腹にガスが溜まるポッコリお腹
- いつもお腹が張っている
- 食後にお腹がゴロゴロ鳴る
- オナラの回数がやたらと多い
- オナラが異常に臭い・・など
今の状態を放置しつづけると腸内環境がどんどん悪化して(腸内腐敗)、将来的に大腸がんのリスクを高めたり、様々な病気を誘引することが近年明らかになっています。
原因不明の腹痛
世界には、原因が特定されない胃腸症状に苦しんでいる方が大勢います。
下記はどちらも世界的に増加している胃腸症状を表す疾患で、最大の特徴は「胃カメラや大腸カメラ・CT検査・採血をしても、何も異常が見つからない」という点です。
少なくとも3カ月間以上、胃腸関連の不調が続いているにも関わらず、検査で異常がみられないため、主要な原因は長年「ストレス」だと考えられてきました。
「低FODMAP食」はオーストラリアのモナッシュ大学 で過敏性腸症候群(IBS)の患者さんのために開発された食事法で、今まで原因不明とされていた過敏性腸症候群(IBS)の症状に対し、一定数の改善効果がみられることが証明されています。
「低FODMAP食」がお腹の悩みを抱える人に有効な食事法として、世界的に注目されています。 便秘と下痢を繰り返す 食後にお腹がゴロゴロ鳴る オナラが出すぎて困っている…などなど 「低FODMAP食」はオーストラリア[…]
小腸にガスがたまると・・
通常、小腸の中の腸内細菌は約1万個程度ですが、SIBOの患者さんの小腸には10倍…約10万個以上の細菌が繁殖しているそうです。
腸内細菌は、運ばれてきた食べ物を発酵させて腸内ガスを生産するので、小腸の中がパンパンに膨れ上がります。これにより、お腹が張って苦しい、げっぷが出る、胃酸が逆流する…といった症状が起きます。
一般的に腸に良いとされるゴボウやアスパラガスなどの「食物繊維」や、ヨーグルト・納豆・キムチなどの「発酵食品」は、SIBOの人にとっては逆効果で、小腸内で増えている細菌にさらにエサを与え、ますます症状を悪化させることになります。
またSIBOは数えきれないほど多くの病気と関連性があることが認識されています。
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 機能性ディスペプシア(FD)
- リーキーガット症候群 (※)
- クローン病
- セリアック病
- 酒さ(Rosacea)
- 胃食道逆流賞(GERD)
- 線維筋痛症
- パーキンソン病・・など多数
- 過敏性腸症候群(IBS)の方の約50~84%がSIBOを併発していると報告されています。
- 過敏性腸症候群(IBS)による腸内細菌の変化がSIBOをもたらすのか、もしくはSIBOの症状が過敏性腸症候群(IBS)を引き起こすのかは、今のところ明らかになっていません。
リーキーガット(※)の危険性
食物成分や細菌など腸内にあるべきものが腸から血中に漏れ出してしまう現象をリーキーガット(漏れる腸)と呼びます。
漏れ出した食物成分は体内で異物と認識され、攻撃を受けて炎症が起こります。また異物に対する「抗体」が作られると、食物アレルギーのキッカケになるとも考えられています。
リーキーガット症候群は医学的にはまだ結論づけられていない仮説上の疾患ですが、不用意に異物が体内に入り込み、炎症がおきる状態が慢性化すると、糖尿病・高脂血症・肥満・認知症・関節リウマチ・甲状腺疾患など、数多くの様々な病気の進行を促進すると考えられています。
「腸」と聞くと、「大腸」を思い浮かべる方が多いかもしれません。 ところが近年、私たちの健康に大きく関わっているのは、大腸よりも「小腸」であることが明らかになってきました。 「小腸」が大事なの?でも「小腸」って何してるんだっけ?![…]
FODMAPのメリット
今は問題がなくても日々の食生活の積み重ねによって、お腹の不調を引き起こす可能性は、誰にでもあります。
日頃から意識して、吸収しにくい糖質=FODMAPを摂りすぎないよう心がけることは、腸への負担を減らし、若々しい腸を保つことにつながります。
また腸はバラエティー豊かな多くの種類の食物を摂取すると腸内細菌の種類が増え、腸の細胞と細胞の間の結びつき(タイトジャンクション)が強くなることが知られています。
タイトジャンクションがしっかり機能すれば、腸のバリア機能が正常に働き、免疫力も高まります。
- 自分の「腸」に合わないFODMAPを発見できる
- 自分の「腸」が喜ぶ食材が分かってくる
- 自分の「腸」との付き合い方に気付く
- 「腸」が元気になると、免疫力もUPする!
低FODMAP食では自分の「腸」に合う食材を見つけて、その中で食べられる「種類」をなるべくバランスよく食べることが推奨されています!
FODMAPのデメリット
低FODMAP食は、いま現在、お腹に不調を感じている方のための食事法です。
お腹の症状がまったくない人がダイエット目的などで取り組むと、せっかく整っている腸内細菌のバランスが崩れて逆に不調を招く恐れがあります。
また低FODMAP食は、人によっては多くの栄養素を制限することになるので、長期的に実施する場合は栄養バランスに注意が必要です。
自己判断で低FODMAP食を行い、一時的に症状が緩和して正しい診断がつかないと、結果的にセリアック病やクローン病、もしくは様々な癌や深刻な健康上の合併症リスクにつながる可能性もあることを、記憶にとどめておいてください。
- お腹に問題ない人が取り組むと、逆に不調を招く恐れがある
- 除去する食物が多い場合、栄養バランスが偏らないよう気をつける
- 長期間お腹の不調が続いている人は、まず専門医の診察を受ける
- 低FODMAP食を行うことで、重篤な疾患の発見が遅れる場合があることを知る
もっとも伝えたいこと
ついつい私たちは、自分の好みや生活スタイルに合う「同じ食べ物」を繰り返し食べてしまう傾向があります。
ある統計によると多くの日本人は、一年を通して6~7種類の同じ野菜ばかりを購入しているのだそうです。
- 好きな食べ物
- 健康に良いと言われる食品
- 依存性の高い嗜好品…etc
「トマトがいいよ」「発酵食品がいいよ」「チーズブーム到来」とテレビで連日放送していますが、同じ食品を食べ続けることは「腸」への大きな負担となり、さらには食物アレルギーや食物不耐症を引き起こすキッカケになる場合すらあります。
また主に先進国で、食物アレルギーやお腹の不調、原因不明とされる様々な病が増えている背景には、季節に関係なく多くの野菜や果物を買えるようになったことが関係しているとの意見もあります。
腸を若く元気に保ち、いつまでも若々しくいるために、バラエティー豊かな「旬の食材」を食卓に取り入れていきたいです。