最近の「腸活ブーム」は、「腸をきれいに保つことが若さや健康につながる」と研究で明らかになったからです。
食べ物と腸の関係
ヒトが食事をすると、口から入った食べ物は以下の順番で体内へ運ばれていきます。
口から肛門までは長い一本の管=消化管(全長約9m)でつながっていて、食べ物(栄養素)や水分と同時に「病原体」も運んでいます。
口 | 食べ物を歯で噛み砕き、唾液と混ぜて粘土状にする |
胃 | 粘土状の食べ物を胃の中に数時間溜めた後、胃液と良く混ぜて粥状にする |
十二指腸 | 胃で消化された食べ物に、すい液や胆汁などの消化液を混ぜて小腸へ送る |
小腸 | 胃や十二指腸で消化された食べ物をさらに分解し栄養素を吸収する |
大腸 | 水分やミネラルを吸収し、老廃物を便として排出する |
腸は第二の脳
「腸」は24時間絶え間なく働き、ヒトの生命を支えています。
「第二の脳」とも呼ばれる「腸」は、脳からの指令がなくても自己で判断して活動する力を備え、特に「小腸」は、様々な栄養素を細かく消化し吸収する役割と、細菌やウイルスなどから守ってくれる防御システムとしての役割を担っています。
FODMAPと腸
通常、食べ物に含まれる「糖質」は、胃や腸で分解されて「ブドウ糖」になり、血液中に吸収されてエネルギーになります。
ただし消化・吸収がされにくいFODMAPは小腸内で吸収されずに大腸まで運ばれて、ビフィズス菌(腸内細菌)のエサとなり「短鎖脂肪酸」を多く産生します。
短鎖脂肪酸は腸に悪影響?!
「短鎖脂肪酸」は悪玉菌の増殖を防ぎ、腸内の炎症をおさえ、脂肪を燃焼させ、さらにがんを予防する…など、私たちの体に良い影響を及ぼすと長年考えられてきました。
そのため、短鎖脂肪酸の産生に有効な水溶性食物繊維を多く含む食品「発酵食品」や「野菜」を多く摂ろうと推奨する声が巷にあふれました。
便秘を解消するために、せっせと食べていたヨーグルトや納豆などの「発酵食品」や「食物繊維」が、実はさらなる便秘を招いていたということです。
FODMAPが便秘を招く仕組み
過敏性腸症候群(IBS)
異常がみられないのに、お腹の不調が続く状態を「過敏性腸症候群(IBS)」と呼びます。
日本では約10人に1人が苦しんでいるとされ、世界的にも患者数が多い疾患です。
ストレスが状態を悪化させるため「気のせいだ」と言われて悩む方も非常に多く、発症の要因はハッキリとわかっていませんでしたが近年、FODMAPとの関連性が明らかになってきました。
近年、日本人の「大腸がん」が急速に増え続けています。 特に女性はがんの死亡率1位、患者数も乳がんに次いで2位、早期の大腸がんは症状が出にくい特徴があり、これが死亡率を高くしている理由の1つだそうです。 大腸がんを患う方は、若い頃[…]
近年、明らかになったこと
胃腸症状の原因は、あらゆる要因が複雑に絡み合っていて、未だに解明できていないことが数多くあります。
医学は常に更新されていくので、これから明らかになっていくこともたくさんあると思います。
「低FODMAP食」はすべての人に有効な手段ではありませんが、つらかった下痢や腹痛の症状から解放されて、喜んでいる患者さんが大勢いるのは確かです。
- 過敏性腸症候群の人は、ラクトバチラス(Lactobacillus)やヴァイヨネラ(Villonella)という腸内細菌を持っていることが多い
- ラクトバチラスやヴァイヨネラを持っていると、短鎖脂肪酸を過剰に増やしてしまう
- 短鎖脂肪酸が大腸内で増え過ぎると、下痢や腹痛などの症状を悪化させる
- 過敏性腸症候群の人は、約50~84%がSIBO(小腸内細菌増殖症)を併発している