食物アレルギーで何より怖いのが、アナフィラキシーショックです。
自分のカラダに合わない食物(アレルゲン)を摂取したことで、意識障害や血圧低下を伴う強いアレルギー症状がおき、最悪の場合は命をおとします。
また、アレルゲンを摂取した食後に運動をすることでアナフィラキシーをおこす「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」や、花粉症の方が発症しやすい「口腔アレルギー症候群」という珍しい特殊型の食物アレルギーもあります。
特殊型の食物アレルギーについては乳幼児の発症例はほとんどなく、小・中学生から成人に多いと言われています。
アナフィラキシーとは?
「アナフィラキシー」は、アレルギー反応による症状が、複数の臓器(皮膚・呼吸器・消化器など)に同時に起こることをいいます。
※強い呼吸器症状を伴うアナフィラキシーに対しては、アドレナリン(エピネフリン)という薬を一刻も早く筋肉注射することが、生命危機を回避するために最も重要とされています。
アナフィラキシーショック
アナフィラキシーに「血圧低下」や「意識障害」を伴った場合、「アナフィラキシーショック」と呼びます。
短時間のうちに症状があらわれ、命を脅かす危険な状態で、医師から処方されたアドレナリンの自己注射製剤「エピペン®」を携帯している場合は医師の指示に基づいて使用します。
IgE抗体が関与する場合が大半ですが、中には薬剤や毒素、運動によって引き起こされる場合もあります。
食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
特殊型の食物アレルギーとして、食物依存性運動誘発アナフィラキシーが知られています。
特定の食物(小麦・甲殻類・果物が多い)を摂取したあと、2時間以内に激しい運動を行った場合に起きるアナフィラキシーを指し、食事のみ、運動のみでは症状が現れません。
発症は10~20代の男子に多く、6000人に1人程度の割合で存在すると推定されています。学校で昼食を食べた後の昼休みや体育の授業中、部活動で初めて症状が起こることが多いようです。
重篤な場合は命に関わるので、今まで食物アレルギーがなかった人でも食後にカラダに異変が現れた場合は注意が必要です。
※食後の入浴や飲酒の後に発症したり、運動後の食事摂取で発症した報告例もあります。
対処方法
食物依存性運動誘発アナフィラキシーが初めて起きる場面を予測する方法は、残念ながら現在ありません。また発症を防ぐ薬剤等もありません。
1度発症したら患者と保護者にきちんと病気を理解してもらい、学校などの集団生活ではアレルゲンを摂取しない食事療法が原則となります。
発症時の食物で1番多いのが「小麦製品」、次いで「エビ・カニ」の順に多く、その他には「牛乳」「フルーツ」「魚」「蕎麦」の報告があります。
- 激しい運動の前に、原因となる食物を摂らない
- 原因となる食物をたべた後は、2~4時間は運動を控える
- 風邪薬や解熱剤で発症しやすくなることがあるので、薬を服用したら運動しない
アレルゲンを含む食物の誤飲を防ぐため、学校関係者などへの情報共有がとても重要です。
検査方法
診断は「問診」と「IgE血液検査」から原因食物を絞り込み、疑いのある食物を摂取した後に運動を行う「誘発試験」を実施することが望ましいとされています。
特異的IgE血液検査で「ω-5グリアジン(オメガファイブグリアジン)」の数値が高い、もしくはプリックテストが陽性で、他の食物アレルギーが否定的であれば食物依存性運動誘発アナフィラキシーの可能性が高いと判断されます。
逆に数値がゼロだった場合、運動誘発性アナフィラキシーの可能性は低いと推察されます。
口腔アレルギー症候群(OAS)
「口腔アレルギー症候群」は幼児期以降に発症するアレルギーで、運動誘発性アナフィラキシーと同様、特殊型の食物アレルギーです。
生の果物、もしくは野菜を摂取したときに、口の中や喉に異変症状(ピリピリ・かゆみ・腫れなど)が現れます。
外見に変化がみられないため、特に幼い子どもは好き嫌いと混同されやすいのですが、中には蕁麻疹・吐き気・腹痛などの発作や、稀に全身症状を起こす場合もあります。
- ◆ 口腔アレルギー症候群の主な原因食物を見る
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スギ・ヒノキ花粉症 トマト シラカバ花粉症 リンゴ・梨・もも・さくらんぼ・キウイ
アーモンド・ヘーゼルナッツ・ピーナッツ
セロリー・ニンジン・ジャガイモ…etcイネ科花粉症 トマト・メロン・スイカ・キウイ・オレンジ…etc ヨモギ花粉症 マンゴー・セロリ…etc ブタクサ花粉症 メロン・スイカ・きゅうり・バナナ…etc ※ラテックス・フルーツ症候群を起こしやすい食品 バナナ・メロン・マンゴー・キウイフルーツ・アボガド・栗・トマト・じゃがいも - 通常、調理・加熱したものには反応しません。
- 口腔アレルギー症候群の約8割は複数のアレルゲンを持っていて、次第に数が増えていく傾向があります。
- 同じ種類の果物を多量に食べたり、日常的にジュースを飲んでいると、果物アレルギーの可能性が高まると言われます。
「口腔アレルギー症候群」はゴム(ラテックス)に対するアレルギーを合併することも多いと報告があります。その場合は「ラテックス・フルーツ症候群」と呼ばれます。
花粉症との関係
花粉症の方が発症するケースがとても多いので、口腔アレルギー症候群は別名「花粉食物アレルギー」とも呼ばれています。
花粉に対する「抗体」が果物にも反応して「交差反応」を引き起こすと考えられています。
交差反応とは?
1度アレルギー反応を起こしたことがあると、似たタンパク質を持つものに対してアレルギー反応が出やすくなります。これを「交差反応」といいます。
例えば、牛乳アレルギーの人が羊や山羊のミルクに反応したり、シラカバ花粉症の人がリンゴや桃を食べると、口の中にかゆみや腫れ・口の周りに紅斑が現れたりする症状です。
交差反応性には、その人のIgE抗体が反応するアレルゲン成分の違いなどにより大きな個人差があります。
新生児・乳児消化管アレルギー
新生児期から早期の乳児期に、重症の嘔吐・下痢・血便を引き起こす食物アレルギーです。
主に粉ミルクに含まれる牛乳に対するリンパ球の反応によって症状が起きています。
IgE抗体を介する「即時型アレルギー」とは異なり、このタイプはアトピー性皮膚炎や喘息など、他のアレルギー疾患とは関連がないとされています。
おまけ(アレルギー名の由来)
病名の名付けは様々な方法がありますが、アレルギーに関しては「アレルゲンの種類」「疾患の部位」「症状」から名付けられているものが多いです。